朝起きたら、私は蟲になっていた。 
ん? 
何か様子が違う。 
あぁ、そうか。私は蟲になったのだ。 
かつて、そんな小説があったような気がしたが、 
何ゆえ、蟲になってしまった私の脳では思い出すこともできない。 
私は仕方無く、蟲として生きていくことにした。 
私は部屋から這い出し、隣の姉の部屋へ向かった。 
いつもは、姉が留守の間を見計らって、コソコソと忍び込んでいるのだが、
蟲となった今では、 こうやって堂々と入っていくことができる。 
ドアの隙間から、姉の部屋の中に進入する。 
あぁ・・・。姉の匂い・・・。 
蟲になった今でも、姉の匂いだけは憶えている。 
いやむしろ、匂いに対してはより鋭敏になったような気もする。 
これも蟲として生きていくための機能なのか。 

まあ、そんなことより、今は姉の匂いを満喫しよう。 
この匂いは、姉が使っている化粧品・香水の匂いなのだろうか。 
それとも姉自身が発している匂いなのだろうか? 
いずれにせよ、なんて甘い匂いなのだろう・・・。 
かつては、この匂いを嗅いだだけで、チンコがオッキ立ちしたものだが、 
今、蟲である私には、そういった器官が存在しない。 
あぁ、何てことだ。 
以前より、数百倍の感覚で、姉の匂いを知覚できるというのに、 
今の私には、その喜びを表現することができないのだ。 
が、そのことは、もういい。 
今さら、愚痴っても元の体に戻ることはできないのだから・・・。 

私は、蟲となった利点を最大限に生かそうと思う。 
姉はまだベッドで就寝中だ。 
大学生である姉は、午前中の講義が無い日は大抵起きるのが正午前だ。 
今も静かに寝息を立てている。 














私はベッドの柱をよじ登った。 
私の体は面白いように、木に粘着し、スイスイと垂壁を登ることができた。 
登頂を果たした私は、毛布をかき分け、姉のもとへと急いだ。 
そしてようやく私は姉の着る、ネグリジェに辿り着いた。 
私が人間だった頃、そのネグリジェの匂いを嗅ぎながら、何度オナニーをしただろう。 
私は無性にその頃のことが懐かしく思え、涙が出そうになった。 
が、蟲である私には涙腺器官が失われていた。 

私はネグリジェをかいくぐり、遂に姉の生身の身体に到達した。 
私は今、姉の首の部分に居る。 
何て柔らかいのだろう! 
蟲である私の触感感覚は、人間時代の数千倍にも感じられる。 
その状態で、最愛の姉の肌を味わえるのだっ! 
もう、考えられない位の喜びだった。 
他に表現のしようがないので、私はただクネクネと体をよじらせた。 
恐らく人間が見たら、忌み嫌うであろう、あのポーズだ。 
蟲の身のくねらせには、実はこんな歓喜の意味があった、というのを、 
蟲になって、初めて思い知らされた私であった。 

私は先を急いだ。 
目指すは姉の乳房だ。 
未だ触れたことの無い聖域。 
が、蟲である私には、今それを体感できる! 
はやる気持ちを抑え、私は体全体を使って前進する。 
なかなか近づかない、姉の豊満なバスト。 
私は、ヒマラヤへ向けて行進するキャラバン隊のことを思った。 
諦めてはいけない。
こうして少しずつ前進すれば、いつかはあの遥かなる山稜の頂に辿り着くのだ。 
ジワリジワリと前進する私。 
やがて、大地が大きく揺れ始めた。 
姉が呼吸するたびに大きく胸を揺らすのだ。 
落とされてはならない。私は足(?)と思われる部分に力を入れた。 

そして遂に姉のバストの裾野部分に辿り着いた。 
前方には、こんもりとした丘が二つ確認できる。 
私はその丘を登り始める。 
今、私は、憧れの地に居るッッ! 
胸いっぱいに喜びを覚えながら、私は進む。 
そして、躍り出た頂上部。 
ピンク色の粒々地帯を、私は歓喜のクネクネポーズをしながら通過した。

そして・・・。 
最後に溶岩ドーム状にせり上がった突起部分を登りきると、 
私の視界から前方を遮るものが無くなった。 
やった! 
私は遂に、姉の乳首の突端部分に立ったのだ! 
私の胸に熱くこみ上げるものがあった。 
私は、恐らく私の口と思える部分を、大地に接着させた。 
そして、思い切り吸引した。 
ああ! 
人間時代には、成し得ることのできなかった、姉の乳首への接吻! 
蟲である私には、今それが出来たのだ! 
蟲もけっこう悪くないな・・・。
と、そんなことを思いながら、 
私は飽きもせず、チュウチュウと姉の乳首を吸い続けた。 
もう、このまま蟲のままでいい! !

私が人間への未練を断ち切って、姉の乳首を吸っていると、 
突然大地が激しく揺れ動いた。 
「んん。うぅーーーん。」 
姉が眼を覚ましたようだ。 
は、早く逃げなければ! 
私はもんどり打って、姉の乳首から転げ落ちる。 
そのまま、姉の胸の谷間に落ちてしまった。 
うひゃあーーーーっ! 
急落下して、意識朦朧としていた時、 
上空が真っ暗になったかと思うと、 
次の瞬間私の体はフワーーっと宙に浮いていた。 
どうやら姉が私のことを指でつまみあげたみたいだ。 

「キャアァッ! 
 何コレぇええっ! 
 キモーーーいっっ!」 

そう言って、姉は私のことを思い切り、壁へ投げつけたのだ。 
うわああーーーーーーっ!!! 

ひゅぅぅーーー・・・。 

私の意識は一瞬、飛びかけた。 
もうこのまま壁にぶつかって死ぬんだな、と一度は諦めた。 
が、なかなか壁が近づいてこない。 
私の体の軽さのせいなのか、私は楕円軌道を描いて、床へと落下していった。 
私がもし人間だったら、即死状態の落差だったが、 
私はふわーーーっと、床に着地した。 
九死に一生を得た私だった。 
これからは気を付けないと。 
姉の身体に直かに触れられるのは、大きな喜びだけど、 
死んでしまっては元も子もないもんな。 

私はゆっくりと体を起こし、たんすの方へ向かった。 
夜までのんびりしていることにしよう・・・。 
夜になって、姉が寝静まったら、もう一度姉のところへでかけよう。 
今はしばらくの間、姉の下着に包まれて、眠ることにしよう。 
蟲である私に睡眠はあるのだろうか? 
今、蟲である、ってことも実は夢なのではないだろうか? 
この夢が覚めて、またいつもの姉との暮らしが戻ればいいのに、 
と思う反面、このままずっと姉の部屋で蟲として生きていくのも、 
悪くないかもしれないな、と私は思った。 
あぁ・・・。 
なんだか、頭が痛くなってきた。 
蟲である私には、これ以上、脳を働かせることはできないのかもしれない。 
姉の部屋で、姉への淡い想いを抱き続ける蟲一匹・・・。 
お姉ちゃん、僕、蟲になっても、お姉ちゃんのこと大好きだよう。 
だから、殺さないでね。 
僕、ずっとお姉ちゃんと一緒に居たいんだようぅ・・・。 
薄れ行く意識の中で、私はいつまでも繰り返した。 
・・・・・、・・・・・。